自己破産はこわくない?
借金のお悩みでご相談に来られる方の多くは、すでに深刻な負債状況となっています。
借金の金額が大きくなく返済を継続できる見込みがあれば「貸金業者等の債権者と交渉を行い、現実的な返済計画を作成し直す」ことによって、債務を整理することができます。
しかし実際には、借金の返済のために新たな借入を繰り返すという悪循環に陥っている方がほとんどです。
※ですから、どうにもならない状況になる前にご相談されることをおすすめします。
深刻化している状態であれば「自己破産」ということも選択肢に入れてご相談頂ければと思います。自己破産は多くの方が思っているほど怖いものではありません。今回は個人の自己破産についてご説明します。
自己破産とは、免責を受けること
借金の金額が大きく資産や収入から考えて今後の返済が難しい場合は、債権者との任意の交渉によって返済計画を見直すという手段では、もはや対応することができません。
このような場合は裁判所を通じた自己破産という手続をとることによって、今ある借金の返済を免れることができます。
しかし実際に借金のご相談をお受けすると、自己破産という手続に抵抗を感じておられる方が少なからず見受けられます。
- 「自己破産」「破産者」といった言葉自体が暗い、恥ずかしいというイメージを連想する
- 「自己破産という手続に対する誤解」がある
上記でも特に誤解による抵抗が大きいようですが、そもそも自己破産の中心的な機能は「破産手続そのものよりも免責決定を受ける」点にあります。免責により、債務の支払責任が免除されることになるのです。
借金の返済に追われご自身の生活がままならないという状態であれば、自己破産を行うことが効果的なケースが数多くあります。そのためには自己破産に対する誤った認識を捨て、正しい知識を取り入れることが重要です。
自己破産に関する誤った認識
誤った認識 | 正確な知識 |
---|---|
戸籍や住民票に記載される。 | 戸籍や住民票に破産の事実が記載されることはありません。 |
仕事を失ってしまう。 | 税理士、司法書士、社会保険労務士、宅地建物取引業者など、一定の職種では資格を喪失することになりますが、通常の会社員や公務員であれば破産によって仕事をやめなければならないということはありません。 |
勤め先にバレてしまう。 | 破産に関する通知が勤め先に届くことはまずありません。 自己破産したことは官報と破産者名簿に記載されます。 絶対にバレないということではありませんが、通常の生活では官報を見る機会はほとんどないでしょう。 また破産者名簿は原則非公開となっているほか、免責決定が確定すると名簿から名前が消えます。 |
無一文になってしまう。 | 生活必需品と少額の現金を持っておくことは可能です。 これによって、新たな生活をスタートさせることは可能です。 |
給料,年金,雇用保険等が差し押さえられる。 | 破産手続によってこれらを差し押さえられることはありません。 |
選挙権や被選挙権を失ってしまう。 | 破産によってこれらを失うことはありません。 |
自己破産のメリット
免責決定を受けることにより、様々なメリットがあります。
- 債権者からの取立てが止まります。
- 免責許可決定を受けることによって,債務の支払を免れることができます。
- 免責手続中は、差し押さえなどの強制執行が禁止されます。
自己破産のデメリット
しかし、自己破産はもちろんメリットばかりではありません。
- 裁判所を通す手続であるため提出書類の作成や準備が複雑です。また、裁判所や債権者に破産に至る経緯を説明する必要があります。
- 破産管財人が選任されると破産者の財産は管財人が管理処分することになり、破産者は財産を勝手に管理処分できなくなります。
- 裁判所の許可を得ないで勝手に引っ越しをしたり、海外旅行などをすることができなくなります。
- 破産者宛の郵便物が破産管財人に配達されるようになります。
- 破産者は弁理士・公認会計士・税理士・公証人・司法書士など一定の職種に就くことはできず、すでにそれらの職にある場合は免責決定が出されるまで、その資格を失います。
- 破産者は後見人・後見監督人・保佐人、遺言執行者になることができません。
- 取締役の地位にある者が破産した場合、退任事由になります。
「自己破産をしたからすべての債務を免れることができる」というわけではありません。
しかし多額の負債を抱えどうにもならないという状況では、任意整理等を行っても協議し直した返済計画を履行できずに、かえって状況の悪化を招いてしまうおそれがあります。
その場しのぎに無理な対策をとるよりも、自己破産を申し立て免責決定を受けることで、債務の返済を免れ新たな生活をスタートさせる方が利益になるというケースが非常に多いことも確かです。
借金のお悩みを解決するには様々な手段があります。効果的な手段を選択するためには正確な法律知識が必要となりますから、お困りの方はお一人で抱えることなく、まずは一度弁護士にご相談されることをお勧めします。