認知症の人が交通事故を起こしたら
日本では65歳以上の高齢者認知症の割合は約7人に1人、軽度認知障害を合わせるとなんと約4人に1人にまでのぼります。
自動車運転中に事故を起こしてしまい、そこで初めて認知症に気づいた高齢者の方もたくさんいらっしゃいます。
認知症の方が事故を起こしたら法的にはどうなるのでしょうか。
一定の年齢になったら、運転席を誰かに譲るのがいいのかもしれませんよ。
高齢ドライバーの事故は増加の一途
2014年にに高速道路各社と警察庁がまとめた統計によると、
2011年から2013年にかけて起こった高速道路における571件の逆走(事故に至らない案件も含む)の約7割が65歳以上の高齢者によるもの
という結果が出ています。高齢者ドライバーによる交通事故発生状況の原因で多いのが以下のようなものです。
- 脇見や考え事をしていたなどによる、発見の遅れ(67.1%)
- 相手の予測を見誤った判断の誤り(10.0%)
- ブレーキとアクセルを踏み間違えるなどの操作上の誤り(5.9%)
注意力や判断能力の低下など、年齢とともに衰えるものでほとんどが占められているようです。
事故を起こした際の刑事責任
自動車運転中に交通事故を起こして人が死傷した際に、もし運転者が政令で定められている原因の影響を受けていた場合は「危険運転致死傷罪」で処罰されます。
「危険運転致死傷罪」は、飲酒や無免許などの悪質な運転による事故の増加を受けて2014年に施行された比較的新しい法律です。刑は以下のとおりです。
- 負傷させた場合:懲役12年以下
- 死亡させた場合:懲役15年以下
危険運転致死傷罪で最も多いのが「アルコール・薬物の影響」です。「病気」は安全運転に必要な認知、予測、判断などの能力を欠く恐れがある一部の精神病やてんかんなどが該当します。
認知症は危険運転致死傷罪には該当しない
上で述べた「危険運転致死障害」に「認知」の文字があるので「認知症も?」と思われる方もいると思いますが、実はここに認知症は入っていません。認知症の場合はこれより刑の軽い「過失運転致死傷罪」となり、
- 7年以下の懲役・禁固、または百万円以下の罰金
となります。また、重度の認知症である場合は責任能力がないとして、罪に問われなくなる可能性もあります。
損害賠償などの民事責任は変わらない
ここまでは刑事責任について説明してきましたが、損害賠償などの民事責任については、原則として健常者が起こした事故と変わりはありません(ただし上記同様、重度の場合は責任能力を問われない可能性もあります)。
高齢になると注意力や集中力も低下し、過失割合が多くなる可能性も十分にあります。
高齢になったらチェックと返納を
冒頭で述べたように、認知症になっても気づかない場合は少なくありません。ですから免許証の更新前の高齢者講習は積極的に行い、必要に応じて免許の返納という手段も検討しましょう。
「生活が不便になるから」などの理由で怠っていると大変な事故につながることもあるので、周囲の方も気をつけましょう。
茨城県の法律事務所DUONは交通事故問題を多く解決してきた実績をもとに、アドバイスやセミナーなども行っております。初回相談料は無料ですので、お気軽にご連絡ください。