弁護士の行う受任通知とは|その効力・相手方から届いた場合の対処などを解説

突然弁護士から受任通知が届きました。弁護士名で書面が届いたら、驚愕し、その通知にどのような意味があるのか気になる方も少なくないでしょう。
そこで今回は、弁護士が送付する受任通知の効力や、これが届いた場合にどのように対応すればよいかなどについて解説していきます。

1 弁護士が送付する受任通知とは

受任通知とは、弁護士が依頼者から依頼を受けて代理人になった際に、弁護士から相手方に対して、このことを知らせる通知です。
受任通知の発送の対象となる事件に制限はなく、債務整理や離婚、相続、損害賠償や貸金などの金銭の請求など、相手方のある事件であれば広く受任通知送付の対象となります。
受任通知は通常書面を送付することによって行われますが、相手方の住所がわからない場合や急いで対応することが必要な場合には、メールや電話などの方法により行われることもあります。

2 受任通知を送る目的

受任通知を送る第一の目的は、弁護士が依頼を受けたことを知らせ、依頼者と相手方との紛争に関し、その弁護士が連絡の窓口になることを伝えて、依頼者と相手方が直接接触しないようにすることにあります。
しかし、事件の類型によって、これ以外の目的がありますので、以下ではこの点について解説します。

2-1 債務整理の場合

債務整理における受任通知には、債権者からの督促を止める点に大きな目的があります。
債権者は受任通知が届いた場合には、正当な理由がない限り債務者に対して直接弁済を求めることができなくなります。
また、債務整理の場合、受任通知は、債務者が「支払いの停止」という事態に至ったことを示します。
そのため、債権者が信用情報機関にそのことを連絡し、事故情報として信用情報に登録されることとなります(このことを指して「ブラックリストに載る」といわれます)。
さらに、受任通知発送後に債務者が一部の債権者に対して支払いを行ってしまうと、その後、自己破産や個人再生をすることになった場合には、不公平な弁済(「偏頗弁済」といいます。)を行ったと扱われることになり、債権者は弁済された金員を返さなければならなくなります。

2-2 離婚の場合

離婚の場合に受任通知が届くケースとしては、①夫婦の一方が相手方と離婚したいが自身で言い出すことができない場合、②夫婦間で離婚協議をしていたが話し合いがつかない場合が多いといえます。
また、夫婦がすでに別居しているケースが多いでしょう。
いずれの場合も、受任通知を出すことには、依頼者に対する連絡をしないように求めるのが第一の目的ですが、それ以外にも、以下のような目的があります。

2-2-1 今後の方針を伝える

ひとつめとしては、今後の方針を伝えるというものがあります。
例えば、①既に夫婦間で離婚協議がされている場合に、依頼者からこれを引き取って、法的手続を採らずに離婚協議を弁護士が代理して継続していく、あるいは、②離婚調停を起こすことを告知するというものです。
① は、少なくとも夫婦間で離婚については合意しており、離婚の条件について
もすり合わせが可能と考えられるケースです。
② は、そもそも離婚自体について合意がとれていない、あるいは離婚自体は合
意していても、それ以外の条件について夫婦それぞれの意向がかけ離れており、調停に手続を進めないと解決がつきそうにないという場合です。

2-2-2 依頼者を相手方から保護する

依頼者が相手方からDVやモラハラの被害に遭っていた事案については、受任通知は、依頼者を相手方から保護するという目的を有します。
このようなケースでは、被害を受けている当事者本人が離婚の意思を相手方に伝えると、さらにひどい暴力や暴言を受ける危険性があります。
そこで、受任通知により弁護士が介入したことを知らせ、相手方の依頼者に対する連絡を拒み、依頼者がさらなる被害を受けないようにすることが求められます。
ただし、DVやモラハラの加害者は、受任通知を送付しても執拗に依頼者本人と接触しようとする場合があるため、受任通知の送付に併せて、依頼者本人に相手方の電話やLINEのブロック、メールの受信拒否、相手方が知らない場所への避難などの対応をとってもらうことが必要となる場合も少なくありません。

2-3 相続の場合

相続において弁護士が受任通知を出すのは、相続人間で遺産分割について協議がまとまらず、相続人のひとりが自身に少しでも有利になるよう弁護士に対応を依頼するケースが多いです。
弁護士としては、相続人間の協議を続けていけば解決できると判断した場合には、受任通知を出して協議を継続します。
しかし、相続人それぞれの意向の隔たりが大きい場合には、協議で遺産分割を成立させることはできません。
この場合は、遺産分割の調停を申し立てることを受任通知において告知し、依頼者以外の相続人に調停への参加を呼び掛けるという目的も有することとなります。
相続のケースでは、相続人間に感情のしこりが残っていることも多く、相続人のひとりが弁護士に依頼をしたこと自体が不満の対象となることが少なくありません。
そのため、受任通知を無視して、依頼者に直接連絡を試みる相続人がいることもあります。
このような場合には、弁護士が受任通知を出すと同時に、他の相続人の電話を着信拒否したり、LINEをブロックするといった対応が必要になります。

3 受任通知が届いた場合の対処

債務者や配偶者、相続人のひとりが弁護士に依頼し、この弁護士から受任通知が届いた場合、相手方としては、本人に直接連絡を取らないことが求められます。
受任通知の内容にわからないことがあったり、伝えておきたいことがあった場合には、依頼を受けた弁護士に対して伝えることが必要となります。
また、債務整理では、受任通知において、債権者に取引履歴を開示するよう記載されていることがほとんどであるため、債権者はこれに対応して取引履歴を整理し開示することが必要となります。
なお、受任通知がカバーする範囲は、弁護士が依頼を受けた事件やこれに関連する事柄となります。
そのため、全く関係がないことであれば、弁護士を超えて連絡をしてもいいということになりそうです。
しかし、受任通知の目的をあまりにも狭く理解すると、広く依頼者と相手方とのやり取りを許すこととなり、結果として、依頼した事項に関する話が相手方から直接依頼者に持ちかけられてしまうことになりかねません。
そのため、受任通知がカバーする範囲かどうかは、弁護士がその時その時で個別に検討することになります。
相手方は、「これは受任通知の範囲外だ」と安易に判断せずに、弁護士に対して用件を伝え、直接連絡して構わないか確認することが必要となるでしょう。

4 受任通知を無視した場合

受任通知を無視して、弁護士を飛び越えて依頼者本人と接触した場合、当然のことながら、弁護士から接触をやめるようにいわれます。
場合によっては、それだけで済まされないこととなります。
例えば、債務整理において、貸金業者や債権回収会社は、受任通知が届いたら督促をしてはいけないと法律上定められています。
受任通知を無視して督促を続けると、刑事罰や行政処分の対象となります。
一方、離婚や相続の場合は、受任通知を無視して本人と直接接触したからといって、即刑事罰などの対象になるわけではありません。
しかし、接触の頻度や接触時の言動によっては、その行為が違法となり損害賠償や慰謝料請求の対象となる場合があります。頻度や言動があまりにもひどい場合には、業務妨害罪(刑法234条)や脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)などに該当するとして処罰される危険性もあります。

5 まとめ

受任通知は、どのような事件で、どのような場面で弁護士から送付されるかによって、目的や意味が異なってくるものです。
弁護士に依頼した人にとっては、弁護士という「盾」ができることになるため、それまで紛争の渦中にあって心身が休まらなかった状況が、相当程度緩和される意味を持つこととなります。
逆に受任通知を送付された人にとっては、本人と直接接触することができなくなるため、もどかしい思いをするうえ、自身が不利な立場に置かれ、利益を守ることが難しくなるのではないかという不安に駆られることとなるでしょう。
当事務所は、自身の立場を少しでも有利にするために、あるいは煩わしい問題から距離を置くために介入してほしいという方のご依頼を受けるのはもちろん、受任通知を受け取って今後どのように対応してよいのかわからないという方のご相談に乗ることも可能です。
弁護士に介入してほしい方も、弁護士に介入されて困っている方も、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。お待ちしております。

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