裁判所に訴えを起こされたらどうすればよいか?弁護士が解説
自分は紛争とは無縁で、裁判を起こされることはあり得ない。
そう思っている方もいらっしゃると思いますが、そんなことはありません。
様々な理由により、ある日突然、裁判所から訴状が届き、訴えが起こされたことが判明することもあり得ます。
今回は、裁判所から訴えが起こされるケースとして一般的にどのようなものがあるか、訴えを起こされたらどのような流れになるか、無視した場合どうなるか、などについて解説していきます。
1 訴えを起こされる具体的なケース
裁判所に訴えを起こされるケースは様々ですが、以下では比較的よくみられるケースについて解説します。
1-1 借金を返していなかったケース
もっとも代表的な例は、知人等からお金を借りていたのに返済をしておらず、貸金請求訴訟が提起されるケースです。
借用書を作成していないケースでも、SNSでも会話や、振り込みの記録などから借り入れをしていたことや返済をしていなかったことの証拠があれば、訴えを提起されることが少なくありません。
1-2 家賃を滞納していたケース
賃貸物件に住んでいるにもかかわらず、家賃を何か月も滞納していると、大家から未納家賃の請求をされるだけでなく契約を解除され、物件を明渡すことを求めて訴訟を提起される場合があります。
1-3 損害賠償が請求されるケース
損害賠償を請求するための訴えも少なくありません。
1-3-1 交通事故を起こしたケース
交通事故を起こして、相手の車や住宅その他の建物にぶつけて損壊させた場合や通行人等にけがをさせた場合には、民法上の不法行為(709条)というものが成立し、修繕費や車代、治療費などを損害として賠償するよう請求される訴えが提起されることがあります。
保険に入っていれば保険会社が被害者と示談交渉してくれて、訴えに至らないことも少なくありませんが、保険に入っていない場合や、保険に入っていても、保険会社が提案する賠償内容に相手が納得しない場合には、訴訟になることもあります。
また、損害賠償とは別に、刑事事件として、器物損壊罪や建造物損壊罪に問われることもあります。
1-3-2 他人にけがをさせたケース
交通事故でなくとも、相手にけがをさせれば、そのことについて故意や過失がある場合には、やはり、不法行為が成立し、その治療費などを損害として賠償するよう請求されます。
ケガをさせた原因が暴力の場合には、損害賠償とは別に、刑事事件として、傷害罪に問われることもあります。
1-4 慰謝料を請求されるケース
慰謝料とは、他人の言動に不法行為が成立する場合に、これにより被った精神的な苦痛を金銭に換算して請求するものです。
訴えが起こされるケースとしては、以下のものがあります。
1-4-1 不倫をしたケース
他人の配偶者と性的行為に及ぶなど不倫をした場合には、円満な夫婦関係を維持する利益などを侵害したとして不法行為が成立し、これにより不倫相手の配偶者に精神的苦痛を与えたこととなるため、慰謝料請求訴訟を起こされる場合があります。
なお、一般的に慰謝料の金額は、不倫により相手とその配偶者が離婚した場合の方が離婚に至らなかった場合よりも高額になります。
1-4-2 他人の名誉を棄損したり、侮辱したケース
知り合いの悪口を言いふらしたり、SNSに書き込んだりした場合には、その人の社会的評価を落とす、あるいは名誉感情を傷つけるものとして、不法行為が成立します。
そして、このような行為は対象者に精神的苦痛を与えるものなので、やはり慰謝料請求訴訟が起こされる場合があります。
1-4-3 セクハラ、パワハラのケース
職場の部下らに対して、性的な嫌がらせをしたり、口汚い言葉で叱責するなどの行為を行うと、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントに該当し、不法行為が成立します。
された側はこれにより精神的苦痛を被るので、慰謝料を求めて訴えを起こされる場合があります。
2 裁判所から特別送達で送られてきた書類は内容を確認しましょう
裁判所に訴訟を起こされたということは、通常、裁判所から訴状が届くことによってわかります。
裁判所が訴状を送る際には、訴えを起こされた人やその同居人に対して手渡しする方法が採用されます。これを特別送達といいます。
封書には「特別送達」という文字が書かれています。
特別送達により裁判所から封書が送られてきたら、訴えが起こされたと思いましょう。
そして、後述するように、訴状が届いたにもかかわらずこれを無視して放置していると、後で取り返しがつかないことが起こりかねません。
特別送達で送られてきたものは、開封してきちんと中身を確認しましょう。
3 訴えられたらどうなるのか
このパートでは、裁判所に訴訟が提起されたらどうなるかについて解説していきます。
3-1 訴訟が提起された後の流れ
訴訟が提起された場合には、特別送達された訴状とともに、答弁書のひな型が入っていて、言い分がある場合には記載して送るようにと指示する書面がついています。同時に、第1回口頭弁論期日の日時が指定されており、出頭するように指示がされています。
ただ、第1回の口頭弁論期日は、答弁書を出しておけば欠席しても問題ありません。
その後は、何回か、主張や証拠のやり取りを裁判上で繰り返し、証人尋問や当事者尋問というものを行って判決が下されるのが基本的な流れとなります。
場合によっては、裁判官から和解するよう打診があり、裁判手続の中で和解をする場合もあります。
3-2 訴状が届いても無視した場合や誠実な対応をしなかった場合
答弁書も出さずに第1回口頭弁論期日を無断で欠席した場合には、その時点で、審理が終結され、通常は、請求側の訴えを全面的に認める判決が下されます。
仮に答弁書を出しても、それ以降誠実に対応しなかった場合には、やはり請求側の訴えを全面的に認める判決が下される場合が少なくありません。
無視したり誠実な対応をしなかった場合には、裁判所に不利に取り扱われることになります。
3-3 敗訴判決後の流れ
訴状を無視したり誠実な対応をしなかったがために敗訴判決が下された場合、その後支払いをしなければ、強制執行の手続が採られることとなります。
金銭請求の訴訟(貸金返還訴訟や、未納家賃の請求訴訟、損害賠償請求訴訟、慰謝料請求訴訟など)の場合には、給与や預金を差し押さえられたり、あるいは不動産を差し押さえられて換価され、支払に回されることとなります。
不動産の明渡請求訴訟の場合には、執行官がやってきて、立ち退くように強制されることとなります。
勤務先や財産を知られていないから大丈夫と油断していてはいけません。
現在は判決が下されれば、金融機関に照会をかけて預金口座があるかどうか調査することが可能ですし、不動産を所有しているかどうかは登記を調べれば比較的容易にわかります。
無視を貫けば逃げとおせると思っている方が時折いますが、決してそういうことはありませんので、注意が必要です。
4 弁護士に依頼するメリット
訴えを起こされた場合に弁護士に対応を依頼すると、事案に合わせて適切な処理をしてもらうことができます。
例えば、貸金請求訴訟の場合には、一括で返済が難しければ、裁判で状況を説明したうえで分割払いの和解を提案してもらうことができます。
どうしても支払うのが難しい場合には、自己破産の手続をしてもらうこともできます。
それ以外の訴訟で、相手の主張に不合理な部分があれば、証拠を集めて適切に反論してもらうことができます。
その結果相手の請求が認められないこともあれば、相手の請求額よりも少ない金額で和解できることもあります。
貯金や家を差し押さえられてそれらを失うリスクや、給料を差し押さえられて訴えを起こされたことが職場にばれてしまうリスクを回避することが可能となります。
訴えを起こされた場合に弁護士に依頼するメリットはとても大きいと言えます。
5 まずは、弁護士にご相談ください
訴えを起こされて訴状が自分の元に届いたら、狼狽してしまいどうしてよいかわからなくなる方もいるかもしれません。
しかし、その場合は、まず弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、訴えを起こされるに至った状況を聞いたうえで、適切に対応することが可能です。
当事務所は、訴訟対応に精通した弁護士が揃っております。是非お気軽にご相談ください。