法人破産
法人破産の概要
破産には,個人の破産と法人の破産がありますが,ここでは法人の破産について説明します。
法人破産は,債務超過(債務が払えなくなった状態)の法人について,裁判所の手続きを通して,債務を無くす手続きです。
破産手続きを行い,債務の免責を受けると,債務を返済する必要はなくなります。破産手続きが終了すれば,法人格も消滅します。
一方,破産手続きをとる場合,当該法人が財産を隠し持っていないか等について裁判所によるチェックがされることになります。
財産をもっている場合,その財産は債権者のために没収され,管財人により換価され,配当にまわります。法人の場合,自由財産というものはなく,すべて没収されます。
法人破産を行う場合,通常は代表者も同時に破産の申し立てを行います。代表者個人は,法人の債務について連帯保証をしていることがほとんどだからです。
手続の流れ
1 受任通知の発送
破産手続きを行う場合,まず弁護士は債権者に対し,「受任通知」という書面を送ります。受任通知には,弁護士が介入して破産手続きを行うことになったこと,ついては債務額を把握したいので債権者が有する債権の額等について回答してほしいこと,債務者本人やその家族には連絡しないでほしいこと等が記載されています。受任通知を出すことによって,債権者からの請求は一切止まります。これによって債務者は,平穏な生活を取り戻すことができます。債権者が連絡する先は,債務者から弁護士に変わり,債権者からの様々な問い合わせに対し,弁護士が窓口として対応を引き受けることになります。
受任通知を発送すると,債権者・労働者から問い合わせが殺到する場合があります。会社が価値のある動産を有している場合,債権者勝手に持っていってしまう危険性もあります。債務者としては,資産を保全し,管財人に引き継ぐことが必要となります。
2 債務額の確定
1週間~1か月程度で,債権者から債権額の回答が出そろいます。これにより,債務の総額が正確に把握できます。
3 破産申し立て
弁護士は,必要な書類をそろえて破産の申立てを行います。法人の場合,必ず管財人という弁護士が選任され,管財手続きとなります。管財人には報酬を支払う必要があり,会社の規模にもよりますが,最低50万円程度かかります。
破産申し立てをした後,管財人が選任され,最低1回は,管財人と面談のうえ打ち合わせを行います。また,管財人の場合は,債権者集会が開かれ,管財人から債権者への説明の機会があります。また,管財人は,債務者の資産を換価し,債権者に配当します。
手続きの期間は,破産申立後,半年程度ですが,資産の内容や換価の状況等により異なります。
4 免責決定
破産の申立てをしただけでは債務はなくなりません。免責決定がでて初めてなくなるのです。裁判所は,免責不許可事由がないかを確認し,問題なければ免責決定を出します。
個人破産のメリット・デメリット
メリット
- 債務について免責を受けられる(返さなくてよくなる)。
- 債権者の同意は不要。
デメリット
- 訴訟や差し押さえは停止する。
- 裁判所や管財人によるチェックが入る。
- 財産は没収される。