個人破産(自己破産)
個人破産(自己破産)の概要
自己破産とは、自分で破産を申し立てる手続きです。破産は債権者側からも申立が可能であり、そういった債権者破産と区別するために「自己破産」といいます。
自己破産には「個人」の破産と「法人(株式会社など)」の破産がありますが、ここでは個人の自己破産についてご説明します。
自己破産するとすべての負債が免除される
個人の自己破産は「支払不能」の状態になったとき、裁判所の手続きを通して負債の支払い義務を免除してもらう手続きです。負債の免除を「免責」といいます。
債務の免責を受けると税金等の一部の債権を除いてすべての債務を返済する必要がなくなります。
これまで借金返済に追われていた方も一切返済しなくてよくなるので、生活を立て直すための抜本的な解決が可能な手続きです。
免除される負債の例
- カードローン、クレジットカード、消費者金融の借金、キャッシングやリボ払いの負債
- 滞納している携帯電話代(スマホ代)
- 滞納家賃
- 買掛金、リース料
- 保証債務
- 奨学金
- 住宅ローン
- 滞納している水道光熱費(ただし下水道料金は免責されません)
借金だけではなく上記のような負債すべてが免除されます。支払えなくて困っているなら、早めに自己破産をしましょう。
給料の差し押さえを停止する効果
借金を滞納し続けていると、給料を差し押さえられてしまうケースがよくあります。いったん差し押さえを受けると、完済するまで毎月の給料やボーナスの差し押さえが続き、生活が困窮してしまうでしょう。
自己破産を申し立てると差し押さえを止める効果があります。「破産手続開始決定」があると、差し押さえの効果が当然に失われたり中止したりするのです(自己破産の種類によって具体的な効果は異なります)。
いずれにせよ、差し押さえを止めるには非常に有効な方法となりますので、給料を差し押さえられて日々の生活にお困りであれば一刻も早く自己破産しましょう。
自己破産によって失われる財産
自己破産すると、生活に必要な最低限を超える資産が失われます。一定以上の資産が現金化され、債権者へ配当されるためです。ただし現金99万円、預貯金等の個別資産についてはおおむね20万円程度までのものであれば手元に残せるので、すべての財産がなくなるわけではありません。
自己破産の際、財産を失いたくないからといって財産隠しをしてはなりません。破産手続きでは裁判所や管財人から「財産を隠し持っていないか」慎重に調査されます。財産隠しが発覚すると「免責」を受けられないリスクも発生します。
なお「破産手続開始決定」後に取得した財産はすべて破産者のものになります。
手続き後に得た給料を債権者に配当されることはありませんし、破産手続開始決定後であれば遺産相続もできます。
破産したら生活できなくなるなどの心配は要りません。
自己破産をしても財産がなくならない人
以下のような人は自己破産をしても一切財産がなくなりません。
- 現金99万円以下
- 預貯金や車、保険解約返戻金額がおおむね20万円以下(地域ごとの裁判所の運用によって異なります)
上記のように財産が少ない方の場合、「同時廃止」という簡単な手続きで破産を進めてもらえます。費用も安く期間も短くなり、破産者にかかる負担は小さい手続きです。
現実に個人が破産するケースでは半数以上の方が同時廃止となっています。自己破産の一般的なイメージと異なり「財産はなくならない」ケースが多いといえるでしょう。
その他に考えられる自己破産のリスク
財産が失われる以外に考えられる自己破産のリスクは以下のようなものとなります。
- 資格制限
司法書士や税理士、宅建士、卸売業、貸金業、質屋、騎手や調教師、警備員、生命保険外交員などの一定の資格が停止されます。ただし一生その仕事ができなくなるわけではなく、免責をうけて復権すればまたもとの仕事に戻れます。
- 官報公告
自己破産すると、氏名や破産した情報が「官報」によって全国に公開されます。
ただし実際に官報を購読している人は非常に少なく紙面も小さいですし、毎日多数の債務者が掲載されるので、ほとんど目立ちません。
官報公告によってご家族や勤務先、友人知人などに知られる可能性はまずないといって良いでしょう。
- 信用情報に事故情報が登録される
自己破産すると、「個人信用情報」に事故情報が登録されます。これにより、破産手続き後5~10年程度は新たにローンやクレジットカードを利用できなくなってしまいます。
ただしご家族が本カード会員となっている場合に発行してもらえる「家族カード」であれば利用できますし、ご本人名義でも「デビットカード」は発行してもらえます。
現代社会において、少なくともクレジットカードを発行できないからといってさほど大きな不利益はないといって良いでしょう。
自己破産が適している人
以下のような状況であれば、自己破産を検討するようお勧めします。
- 病気やけがで働けなくなった
- 借金や負債の額が大きすぎて、減額してもらっても払えない
- 財産がほとんどないので自己破産をしても失うものがない
- 事業に失敗して莫大な借金が残った
- 保証債務を支払えない
- 住宅ローンの残債を支払えない
- 奨学金を支払えない
- 生活保護を受けたい
まずは一度、弁護士までご相談ください。
浪費やギャンブル、FXの借金と自己破産
浪費やギャンブル、FXなどの投資に失敗して高額な借金をしてしまった場合「自己破産できない」と考える方がたくさんいらっしゃいます。しかし上記のような借金でも多くのケースで免責してもらえるので、あきらめる必要はありません。
免責不許可事由とは
自己破産には「免責不許可事由」があります。免責不許可事由とは「該当すると免責を受けられない事情」です。
- 高級品の購入などの浪費
- パチスロ、競馬などのギャンブル
- 株式や先物、仮想通貨、FXなどの投機行為
こういったものが典型的な免責不許可事由とされます。
免責不許可事由がある方が自己破産を申し立てると、裁判所で「免責してもよいかどうか」を厳しく調査されます。
具体的には「破産管財人」が選任されて詳しく事情を聞かれ、家計収支表をつけるようにいわれたり毎月の生活を報告するよう求められたり反省文を書くようにいわれたりします。
ただし「免責を受けられない」わけではありません。
裁量免責とは
免責不許可事由があっても免責を受けられるのは「裁量免責」という制度があるからです。
裁量免責は、免責不許可事由のある方でも裁判所の判断で免責を許可することです。
浪費やギャンブル、過剰なリスクをとる投機行為があっても、しっかり反省していて問題行動をやめており、経済的再生が可能な状況であれば免責してもらえます。
実際に毎年自己破産を申し立てた人のうと、95%以上が免責を受けられている実績があります。
浪費やギャンブル、投資の借金を返せない場合でも、あきらめずに弁護士までご相談ください。
自己破産を弁護士に依頼するメリット
自己破産を弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
債権者からの督促が止まる
弁護士が各債権者に「受任通知」を送ると、ご本人に督促が来なくなります。貸金業法において、弁護士の介入後は本人から取り立ててはいけないと規定されているためです。
カード会社や消費者金融会社からの手紙や電話が止まるので、楽な気持ちで過ごせるようになるでしょう。
また支払いもストップするので、それまで返済していたお金が家計の中で浮いてきます。自分の生活費や弁護士費用に充てるなど有益な利用方法ができるメリットがあります。
自分ではほとんど何もしなくて良い
自己破産の申立時には膨大な書類が必要です。申立後も裁判所や管財人からの指示に対応しなければなりません。すべての手続きにお一人で対応するのは過大な負担となるでしょう。
弁護士に任せればご自身でなさっていただく作業を大幅に軽減できます。
当初の必要書類さえ揃えていただければ、その後の手続きや裁判所・管財人とのやり取りは弁護士中心に進められるので、楽に破産手続きを終えられるメリットがあります。
安心して手続きを進められる
自己破産にはさまざまなマイナスイメージがつきまとうものです。
- 仕事ができなくなるのでは?
- 勤務先に知られるのでは?
- 家族に知られるのでは?
- ローンやカードを一切利用できなくなるのでは?
- 引っ越しや旅行を制限されるのでは?
- 財産をすべて没収されるのでは?
- 普通の生活ができなくなるのでは?
- 結婚や就職に不利になるのでは?
上記のような不安をお持ちの方も多いでしょう。
実際には上記のような不安のほとんどに根拠はなく、ご心配不要です。
弁護士に相談すれば「心配しなくてよいこと」「世間の思い込み」を明らかにできるので、無駄な心配をせずに安心して自己破産を進められます。
当事務所では茨城県エリアを中心に借金問題に苦しむ方への支援に力を入れております。お気軽にご相談ください。
手続の流れ
1 受任通知の発送
破産手続きを行う場合,まず弁護士は債権者に対し,「受任通知」という書面を送ります。受任通知には,弁護士が介入して破産手続きを行うことになったこと,ついては債務額を把握したいので債権者が有する債権の額等について回答してほしいこと,債務者本人やその家族には連絡しないでほしいこと等が記載されています。受任通知を出すことによって,債権者からの請求は一切止まります。これによって債務者は,平穏な生活を取り戻すことができます。債権者が連絡する先は,債務者から弁護士に変わり,債権者からの様々な問い合わせに対し,弁護士が窓口として対応を引き受けることになります。
2 債務額の確定
1週間~1か月程度で,債権者から債権額の回答が出そろいます。これにより,債務の総額が正確に把握できます。利息制限法の利率を超えているものについては,引き直し計算を行います。これにより,債務額が減ったり,過払いが出たりすることもあります。そのような計算を経て,債務の総額が確定します。
3 破産申し立て
弁護士は,必要な書類をそろえて破産の申立てを行います。その後の手続きは,同時廃止か管財手続きかによって分かれます。
(1)同時廃止の場合
資産のない債務者でかつ破産に至る経緯等に問題がない場合,同時廃止という簡易な破産手続きが利用できます。裁判所によるチェックは,ほぼ書面審査となり,破産申立から4か月程度で手続きが終了します。
(2)管財事件
債務を返済できない状態ではあるが,資産も保有している場合,もしくは,資産を保有していなくても破産に至る経緯等に問題がある場合,管財人と言う,債権者側の弁護士がつくことになり,同時廃止の手続きよりも,より詳細なチェックがなされることになります。この場合,管財人の弁護士費用は,債務者が用意しなければなりません。個人破産の場合,20万円程度が必要となります。
破産申し立てをした後,管財人が選任され,最低1回は,管財人と面談のうえ打ち合わせを行います。また,管財人の場合は,債権者集会が開かれ,管財人から債権者への説明の機会があります。また,管財人は,債務者の資産を換価し,債権者に配当します。
手続きの期間は,破産申立後,半年程度ですが,資産の内容や換価の状況等により異なります。
4 免責決定
破産の申立てをしただけでは債務はなくなりません。免責決定がでて初めてなくなるのです。裁判所は,免責不許可事由がないかを確認し,問題なければ免責決定を出します。
個人破産のメリット・デメリット
メリット
- 税金等を除く債務について免責を受けられる(返さなくてよくなる)。
- 債権者の同意は不要。
デメリット
- 信用情報(いわゆるブラックリスト)に載る。
- 自己破産の情報は官報に掲載される。
- 訴訟や差し押さえは停止する。
- ギャンブル等による債務の場合は利用できない。
- 裁判所や管財人によるチェックが入る。
- 財産は原則として没収される。
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