【株・FX・仮想通貨への投資】で作った借金の債務整理・自己破産について弁護士が解説
株やFX、仮想通貨などの投資をしていると、うまくいかずに借金ができてしまうケースも少なくありません。これらの投資に失敗した場合の借金は、債務整理で解決できるのでしょうか?
結論的には債務整理で解決できるケースが多いのですが、自己破産する場合には「免責不許可事由」に該当する可能性が高く、要注意です。
この記事では株式投資や先物取引、信用取引やFXや仮想通貨などで借金ができてしまった場合の対処方法や自己破産の免責不許可事由との関係を弁護士がお伝えします。
株などの投資で借金ができてお困りの場合、参考してみてください。
1.株などの投資で借金ができる理由
株やFX、仮想通貨などの取引をしているとなぜ借金ができてしまうのでしょうか?
以下でよくある理由をお伝えします。
1-1.損失の穴埋めの失敗
よくあるのは「損失の穴埋め」での失敗です。
FXや仮想通貨の取引で損失が出たとき、穴埋めをするためにカードローンなどで借金をしてしまうパターンです。借金したお金で投資を行ってお金を増やそうとしますが、うまくいかずに借金だけが残ってしまう方が多数います。
1-2.初心者がハイリスク商品に手を出してしまう
最近ではスマホ1台で簡単に取引ができるネット証券も増えています。
投資に関する情報も氾濫しており、知識がなくても投資に手を出す人が急増している状況があります。
知識不足の状態で仮想通貨やFXのレバレッジ取引などのハイリスク商品に手を出し、大きな損失を出してしまう方が増えています。
1-3.追証のための借金
株式の信用取引や仮想通貨・FXのレバレッジ取引などを行うには証拠金が必要です。
損失が膨らんでくると、証券会社や仮想通貨の交換業者から「追証」という追加の証拠金を求められるケースがあります。その場合、追証を払うために消費者金融などから借入をする人がいます。そうなると、当然消費者金融などへ返済をしなければなりません。
こうして借金を膨らませてしまいます。
2.株やFX、仮想通貨などの借金問題解決方法
株式取引やFX、仮想通貨などの投資で借金ができてしまった場合、どのようにして解決すれば良いのでしょうか?
以下で3つの方法をご提示します。
2-1.親族に立て替えてもらう
1つ目は親などの親族に立て替えてもらう方法です。
消費者金融やカードローンの借金は利率が高いので、借りているだけでどんどん支払い額が大きくなってしまいます。親などから借りて一括返済し、後は親に返済してく方が経済的といえるでしょう。
ただし親族に払ってもらうと本人が反省しにくいデメリットがあります。ブラックリスト状態にもならないので、また借入をしてしまう可能性も残るでしょう。
親などの親族が立て替え払いする場合には、本人とよく話し合ってしっかり反省させてからにする必要があります。
2-2.節約や収入増による自力返済
頼れる親族や知人友人などがいない場合、自力返済するしかありません。
これまでよりも節約をしたり収入を増やしたりして、借金返済に充てられる金額を増やしましょう。
たとえば携帯電話を格安スマホに換えたり車を手放したり家賃の安い家に引っ越したり、より収入の高い企業に転職したりすると、返済資金を作れる可能性があります。
ただ自力返済を目指そうとしても限界があります。借金が高額過ぎる場合、節約や収入増によって対応しようとしても困難でしょう。
2-3.債務整理する
自力返済ができなくても、債務整理をすれば借金問題を解決できます。債務整理とは、借金などの負債を返済できないときに負債を整理する方法の総称です。
一般によく利用されている債務整理には以下の3種類があり、状況に応じていずれかの方法をとればたいていの借金問題を解決できます。
任意整理
任意整理は債権者と直接交渉して、借金の返済金額や返済方法を決め直す手続きです。
任意整理をしても、債務者の財産はなくなりません。裁判所を通さないので柔軟な解決が可能となります。
たとえば複数の借金がある場合、ある特定の債権者のみを対象としたり、反対に外したりできます。保証人がついている借金や住宅ローン債務を外してカードローンのみを任意整理することも可能です。
個人再生
個人再生とは、裁判所へ申し立てをして借金の返済額を大幅に減額してもらう手続きです。
任意整理よりも大幅に借金返済額を減らしてもらえます。
また個人再生をしても財産はなくなりません。
ただし個人再生をするには、手続き後に債権者へ支払いができる程度の収入が必要です。無職無収入の方などは個人再生できません。
自己破産
自己破産とは、裁判所へ申し立てをして借金などの負債を免除してもらう手続きです。借金だけではなく未払い家賃や通信費、水道光熱費(下水道料金をのぞく)などもすべて免除されます。
ただし自己破産をすると、生活に必要な最低限を超える資産が失われます。
以下ではそれぞれの債務整理手続きについて、メリットやデメリット、向いている人を比較してみましょう。
3.任意整理のメリット・デメリット、向いている人
3-1.任意整理のメリット
- 柔軟に対応できる
- 必要書類が少ない
- 費用が安く済むケースも多い
- 財産がなくならない
3-2.任意整理のデメリット
- 借金が高額な場合に対応しにくい
- 債権者が応じない場合に対応できない
- 手続き後、一定期間はブラックリスト状態になる
3-3.任意整理に向いている人
借金額が少額、多くはない
任意整理の場合、カットできるのは基本的に合意後の将来利息の部分です。元本は減額できません。借金額があまりに大きいと、任意整理では整理しきれなくなってしまいます。
借金が少額またはそう多くはないケースで向いているといえるでしょう。
その方の収入にもよりますが、目安でいうと借金額は500万円程度までのケースで利用するのが良いでしょう。
最低限の収入がある
任意整理をすると、手続き後に債権者へ返済しなければなりません。返済できるだけの収入が必要です。無職無収入では任意整理できません。
保証人つきの借金がある
保証人付きの借金がある状態で自己破産や個人再生をすると、保証人に迷惑をかけてしまいます。保証人付きの借金がある場合、その借金を外して任意整理するようおすすめします。
車のローンを組んでいる
車のローンに所有権留保がついている場合、そのまま個人再生や自己破産をすると車を引き揚げられてしまう可能性があります。
車を守りたい場合には任意整理を選択し、車のローンを対象から外すようおすすめします。
4.個人再生のメリット・デメリット、向いている人
次に個人再生の特徴についてみていきましょう。
4-1.個人再生のメリット
- 住宅ローン特則を使って家を守れるケースがある
- 財産がなくならない
- 借金を大きく減額できる
4-2.個人再生のデメリット
- 手続きが複雑
- 官報公告される可能性がある
- 収入要件が厳格
- 費用が高額になりやすい
- 手続き後、一定期間はブラックリスト状態になる
4-3.個人再生に向いている人
任意整理では整理しきれないほど借金が膨らんでいる
株やFX、仮想通貨などで任意整理では整理しきれないほど借金が膨らんでしまっているなら、個人再生を検討しましょう。個人再生なら借金を元本ごと大きく減らせます。任意整理で解決できない場合でも解決できるケースが少なくありません。
住宅ローンを利用している
個人再生には住宅ローン特則があり、住宅ローンの残った家を守りやすくなっています。
住宅ローンを利用していて家を手放したくないなら、個人再生を選択しましょう。
財産を失いたくない
個人再生をしても、基本的に財産はなくなりません。失いたくない財産があるなら自己破産ではなく個人再生を選択しましょう。
ただし多くの資産がある場合に個人再生をしても、あまり借金が減額されません。
個別のケースで具体的に借金がどのくらい減額されるのかについては、個人再生を依頼する弁護士に確認すると良いでしょう。
安定収入がある
個人再生するには一定以上の安定した収入が必要です。無職無収入の方や主婦の方などは利用できません。
自営業者やアルバイト、パート、契約社員など自分の収入のある方なら個人再生を利用できます。
5.自己破産のメリット・デメリット、向いている人
5-1.自己破産のメリット
- 借金が0円になって人生の再スタートを切れる
- 借金以外の負債もほとんどが免除される
- 無職無収入でも借金問題を解決できる
- 限度額がなく、いくらの借金でも0にしてもらえる
5-2.自己破産のデメリット
- 生活に必要な最低限を超える財産が失われる
- 数か月間、一定の職業に就けなくなる
- 官報公告される
- 必要書類が多く手続きが複雑
- 管財事件になると費用が高くなる
- 手続き後、一定期間ブラックリスト状態になる
5-3.自己破産に向いている人
以下のような状況なら、自己破産を検討しましょう。
無職無収入
収入がない場合、任意整理や個人再生はできません。自己破産によって対応しましょう。
生活保護を受けている方でも自己破産は可能です。
借金が多額すぎて支払えない
収入があっても株やFX、仮想通貨などでできた借金が大きすぎると返済は不可能となるでしょう。個人再生や任意整理で借金を減らすといっても限度があります。
借金が多額すぎて支払えないなら自己破産を選択すべきです。
財産がほとんどない
自己破産を行うと、生活に必要な一定以上の資産が失われます。反対に、財産が一定以下の場合にはすべて手元に残ります。残せる基準は現金で99万円までが目安です(他の財産も残せる可能性があります)。
財産がまったくない方や少ない方は、自己破産をしても財産がなくなりません。借金だけをなくせるので、自己破産を選択すると良いでしょう。
5-4.免責不許可事由とは
自己破産には「免責不許可事由」があるので注意が必要です。
免責不許可事由とは、該当すると「免責決定」が出なくなる事情です。免責とは借金を0円にする決定をいいます。自己破産しても免責決定が出ないと、借金がなくならないので意味がありません。
株やFX、仮想通貨などの取引は「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」となり、免責不許可事由とされます(破産法252条1項4号)。
よって、株やFX、仮想通貨などで借金した場合、原則的には免責を受けられないことになります。
5-5.裁量免責とは
ただし実際には免責不許可事由があっても「裁量免責」によって免責されるケースが多数です。
裁量免責とは、裁判所の判断によって免責不許可事由のある人にも免責を認めることです。
債務者がしっかり反省していて問題行動をやめており、今後自力で経済的に再生していける可能性が高い場合には、裁判所が裁量で免責を認めてくれます。
実際、自己破産を申し立てた人のうち90%以上は免責を受けられているので、裁量免責される可能性はかなり高いといえるでしょう。
ただし以下のような場合には、裁量免責を受けにくくなってしまいます。
以前にも同じ免責不許可事由があって裁量免責を受けた
以前にも株やFX、仮想通貨などで取引をして損失を出し、自己破産によって裁量免責してもらった場合、2度目の裁量免責は認められない可能性が高くなります。反省していないとみなされるためです。
反省せずに問題行動を繰り返している
初回の自己破産であっても反省がないと、裁量免責は受けにくくなってしまいます。たとえば株やFX、仮想通貨が問題になっているのに破産手続きに入った後も取引をやめていなかったら、反省していないとみなされやすいでしょう。株やFX、仮想通貨などでできた借金を自己破産で解決したいなら、こうした行動はきっぱりやめるべきです。
裁判所や管財人の業務に非協力的
債務者が裁判所や管財人の業務に非協力的な場合にも免責不許可事由に該当します。
裁判所からの指示にはきちんと従い、管財人の業務にはできる限り協力しましょう。
6.株やFX、仮想通貨の借金で困ったときには相談を
株やFX、仮想通貨などの投資で借金ができてしまうと、数百万円単位の高額に膨れ上がってしまうケースが少なくありません。
借金問題を放置していると、債権者から督促が来て最終的に預金や給与を差し押さえられてしまうおそれもあります。そうなる前に、できるだけ早めに債務整理によって解決しましょう。
DUONは借金問題の解決に力を入れて取り組んでいます。どの債務整理手続きが適しているかもアドバイスいたしますし、手続代行も積極的に行います。株やFX、仮想通貨などの投資で借金ができてお困りの場合、まずはお気軽にご相談ください。